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部屋は真っ暗、空も曇った灰色をしていた。
だんなさんが早起きしてジムに行くんだな。
と、iPhone を見るともうすでに7時すぎ。
きょうは、シアトルに起きたかのような、
どんよりとグレーな雨の日だった。
朝食を終えて、だんなさんを送り出し、パソコンを開ける。
そして、ニルヴァーナについての記事を読む。
“5
things you didn’t know about Nirvana.”
彼らの”smells like teen spirit”という曲は、
カート・コバーンの昔の彼女が使っていた
“teen
spirit”という名のデオドラントを、
たまたまカートが脇につけていたのにバンドメンバーが気づいて、
「カートは、teen spiritの匂いがする」と
彼の家の壁に書いたことから生まれたらしい。
なんとも、雨の日の朝にぴったりなニュース。
続いて読んだ記事は、
“6 best
coffee shops in nyc.”
家からそう遠くないカフェも選ばれていてテンションが上がり、
わたしの好きなパンプキン・ラテのことも書いてある。
こちらも、雨の日の朝にぴったりなニュース。
そのあと、だんなさんからメッセージが入り、
今夜のヤンキースのゲームは、
ジーターの最後の試合だと知る。
雨の日の朝にぴったりかはわからないけれど、
切ない気持ちにさせる暗い朝に、
このニュースはじーんときた。
気づけば、パンプキン・ラテの季節かぁ。
早いもので、もう9月下旬。
わたしもすでに妊娠36週を迎えた。
「もう、いつ出てきてもいいわね」
というドクターの言葉に、
女性の出産というメカニズムについて、
なんて不思議なものなのかと考えさせられる。
いつかわからないけれど、いつ出てきてもいい時間。
妊娠してからというもの、
時間についてほんとうによく考えるようになった。
一日ずつ、一週間ずつ、9ヶ月の間、
少しずつわたしのお腹の中で
ベビ太が大きくなってゆく時間。
エイリアンのようなベビ太の動きや様子を
超音波のスクリーンで眺める時間。
お腹が変形するほど激しい
ベビ太の胎動を感じる時間。
だんなさんとの今しかふたりで
ゆっくりと過ごすことができない時間。
猫のコビ太郎とも、今しかふたりでいちゃいちゃできない時間。
結婚して、7年が経った時間。
次にヒロカに会うときは、
胸の中にベビちゃんがいるのね、
と友だちから言われてはっとさせられる時間。
陣痛がきたら、次の日にはママになっている、
ベビ太をこの胸の中で抱いている、
という時間のすごさを考えている、この時間!
“Tudo
passa…”
というネイマールの首に入れられているタトゥ―の言葉がある。
“すべては過ぎ去ってゆく“
「家族や息子とのたのしい時間、
永遠につづくように感じられる苦しい時間も、
すべてがとても早く過ぎ去ってゆくんだ」
と彼は言う。
今、わたしが感じる「時間」の不思議さは、
まさに、Tudo passa な気がする。
たった一日で、向こうの世界、ママの世界に変わるのだから。
いつくるかわからない、いつきてもおかしくない、
カラダの劇的な変化によって、
一瞬にして、ビフォー&アフターのように、
わたしは向こう側に渡るのだから。
そして、そのあとも、
きっと瞬く間に日々が過ぎていき、
半年後にはオムツ替えも、授乳も、
きっとプロになっていて、
すべては、tudo passa になってゆく。
だからこそ、いつでも「今」を大切に、生きてゆきたい。
そんなことを考えていると、
窓の外の雨は小雨になり、
暗くグレーだった空は、ちょっぴりと明るくなっていた。