a bit bite of new york



サンライズからはじまる毎日のサプライズ。

ちょっとしたことを、
ちゃんとしたものに。

そんな小さな出逢いをニューヨークよりお届けします。


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スペイン人のアントニオと、イタリア人のルイジ。
 
30のうちに書き留めたいこと。
2010のうちに振り返りたいこと。

旅をするとたくさんの人との出逢いがあるけれど、
中でも今年の秋に行った
イビサで出逢ったふたりにはぐっときた。

夜な夜なクラブで踊り倒して、
頭がぐるんぐるんになるまで遊んで
明け方にぐでーっと寝て昼下がりに起きる、
といったことをたのしむヨーロッパ人で溢れる
パーティー・アイランドのイビサ。

でもわたしたちはそういうことではなくて、
イタリア人のいう「beauty of doing nothing.」
=(なんにもしないことの美しさ)を味わいたくて、
心の芯がほぐれるような、
やさしい隠れ家ホテルを探していた。

そこでみつけた「Apartamentos Petunia」。
その色は地中海らしい建物の白と青、
それに反射する太陽の朱色が
感じとれる白昼夢の世界。

大きな大きなバルコニーからは
どこまでもつづく真っ青な地中海と、
イビサで有名な神秘的な岩 Es Vedra が見渡せる。
ただただそこに立って深く深呼吸をするだけで、
やさしい地中海の太陽がカラダと心にキスしてくれる。

まさにわたしたちが望んでいた夢の空間であり、
なにもしないことで、幸せを感じるところだった。

そしてわたしたちは、そこに泊まるはじめての日本人客だった。

到着したのが早朝だったので、
午後のチェックインまでどうしようと突っ立っていると、
くしゃっとした笑顔の白髪のおじさんに
「desayuno?」(朝食は?)と聞かれ、
そのまま答えてもいないうちに
せかせかとダイニングテーブルまでエスコートされた。

「なに飲む?コーヒー?エスプレッソ?
コーヒーはミルク入れる?パンやハムはあっちね」
リズミカルなスペイン語で
ことこまかに面倒をみてくれ、
到着日なのにサービスで朝食を食べさせてくれた。
その人が、アントニオというスペイン人。

イタリア人がオーナーのApartamentos Petunia は、
イビサ島西部のサン・ホセという静かな街にある大人向け隠れ家ホテル。
辺鄙なところにあるため交通の便が悪く、レンタカーする人がほとんど。
ホテルでゆっくり「なにもしない」ことを目的にしていた
わたしたちにとっては気にすることでもなかったのだけれど、
なんせ隠れ家ホテルの一番近いビーチさえも隠れビーチなので、
車で行かないとなると、てくてくと歩いて曲がって、
崖をも越えてやっと辿り着くという感じだった。
(景色が美しい散歩なので、全然たのしかったのだけれど。)

アントニオは、レンタカーしなかったわたしたちにびっくりし、
なんと気の毒にと哀れみの顔をみせて、
それでもスペイン語とジェスチャーを巧みに使って
ピーチまでの行き方を説明してくれた。
こちらもがんばって彼の言っていることを理解しようとするものの、
わたしとだんなしゃんのスペイン語レベルは
残念なことにレベルをつけられないほどの低レベル。
せわしないアントニオは、奥からすばやく紙とペンを持ち出して、
お世辞にもうまいとは言えない地図をしゃしゃっと描いて、
入念に右左のジェスチャーを何度も繰り返しながら教えてくれた。

その日の夕方、ビーチから戻ったわたしたちをみつけたアントニオは、
心配していたんだよ、たのしかったかい?
とくしゃくしゃな笑顔を浮かべてウィンクしてくれた。

そんな心あたたかいアントニオとは
また違ったやさしさを持つのが
イタリア人のルイジ。
ルイジは夜のダイニングを担当する人で、
ホテルオーナー、ルチオの弟さん。
アントニオとは反対にとても落ち着いていて、
口数は少ないけれど、
奥深いやさしさとゆとりを感じる
渋めのイタリアーノだった。

2泊したうちの初日の夜、
わたしたちはタクシーに乗ってサン・アントニオまで行き、
そこで夕飯をすませてそのあとはホテルで一杯やることになった。

ホテルに戻ったわたしたちは、
ふたりでキッチンにいたルイジのところへ顔をのぞかせて、
「vino tinto, por favor?」と赤ワインをおねがいすると、
ルイジはややびっくりしたハテナ顔を浮かべつつも
すぐに「si.」と答えた。

アジア人ってそんなにめずらしんだね、と言いながら
ダイニングの席につこうとしたとき、
先に荷物を部屋に置いてからまた戻ってこようと思ったので、
わたしたちは再びルイジのところへ行ってそう告げると、
彼は突然コロっと表情を変えて、
「おお、ここに泊まってる方たちですか!」
と申し訳なさそうに照れ笑いをした。

つまりルイジは、夜の12時近くに
車もなければ到底辿り着けもしないホテルだというのに、
どこからともなく現れたアジア人の男女ふたりが
キッチンまでずかずかとやってきて酒をくれ、
と頼みにきたのかと勘違いしたのだ。

それが、ルイジとのはじめての出逢いだった。
宿泊客でもないものめずらしいアジア人に
なにを聞くでもなくワインを売ろうとする彼の寛大さも、
このホテルの人らしいなとぐっときた。

そのあとわたしたちは大笑いをしながら部屋に戻り、
荷物を置いてからダイニングに行くと、
誰もいないダイニングのふたり席には
1本の赤ワインと2つのワイングラス、
こんもりと盛られた3つのおつまみのお皿がきれいに並べられていた。

ピスタチオとオリーブとポテトチップス。
そしてそこには心に染みるエンヤの曲。
さりげなくかっこいいルイジの演出は、
わたしたちのイビサの初夜を
限りなくロマンティックなものにしてくれた。

そしてつぎの日の夜、イビサでは最後の夜、
わたしたちはどこに行くでもなくホテルでゆっくりして、
ルイジの手料理を食べることにした。

ところがその夜ダイニングにいたのは
居残りをしていたアントニオ。
いつものようにパラパラとスペイン語で
わたしたちに話しかけてくれ、
なにを食べたいか聞いてくる。
メニューはパスタやピザなどのイタリアンがほどんどで、
それらはルイジが作ると知っていた。

注文したあと、わたしたちはどことなくそわそわしていた。

というのもアントニオが毎朝準備をする朝ごはんというのは、
何種類もあるパンやハム、チーズ、
それからゆで卵にヨーグルトやフルーツ、
といった調理を必要としないもので、
どれも高級食材のような美味しさだったけれど、
アントニオはあくまでも飲み物の準備や後片づけをする人。

その代わりルイジはどこか職人肌を感じる男性だったし、
わたしたちはイタリアンである彼の作るパスタが食べたかったのだ。

見えないキッチンからアントニオの準備する音が聞こえてくる。
彼はせかせかとワインをもってきて、笑顔でどう?と聞いてくる。
もちろんアントニオは大好きなのだけれど、
そこに一晩前のムードは感じられず、
彼はエンヤが流れていないことに気づいていない。

するとそこに、奥からルイジがやってきた。
Ciao!とわたしたちに軽く照れ笑いを浮かべ、
キッチンに入った。

よし、ルイジが作る!

パプリカやオリーブ、ルッコラの地中海サラダと
トマトベースのシュリンプパスタ。
彼の料理はとても家庭的で丁寧で、
心に残る美味しさだった。

ルイジはテーブルに料理をもってくると、
必要なものはないかと聞くまえに、
必要以上のものに気づいてくれる。
「oh, musica!」。
彼は前夜と同じようにエンヤをかけて、
ダイニングテーブルはまたもや
ルイジがつくりだすムードになった。

しばらくすると、
アントニオが仕事を終えて家に帰るというので、
わたしはキッチンにいるふたりの写真が撮りたくて
揃ってキッチンに立ってもらった。
それが、この一枚。
それぞれの手の位置や微笑み方などに、
ふたりの雰囲気が微妙に感じられる。

パスタも食べ終わり、
ワインも残り少なくなってきて
ゆったりしていると、
ルイジはまたもやなにも言わずにそっと
4つの袋入りになった
小さいアイスクリームと
デザート酒をもってきてくれた。

すべては彼らのサービスであり心くばりであり、
ここは、さりげなく極上のもてなしを受けられるホテルなのだ。

グラッパかな?と思ったその甘美なお酒は、
「Hierbas Ibicencas」というイビサ産のハーブ酒だった。
ローズマリーやタイム、ジュニパーベリーなど
18種類のハーブエキスをブレンドしたもので、
ヒーリングパワーもあるらしい。

小さく包まれたダークチョコのアイスクリームも、
ほんとうに可愛らしくお洒落で味わい深い。
イタリア人男性はどこまでニクいのだろう。

わたしたちがハーブ酒のことやイビサのことでルイジに質問していたので、
ルイジも同じようにわたしたちにいろいろなことを聞いてきた。

どこから来たの?君たちは彼氏、彼女?それとも結婚しているの?

iPhoneの翻訳機能でイタリア語、スペイン語、英語を使い分け、
すれすれのところで会話がはじまった。

ルイジ自身がオーナーを務める小さなホテルの話、
彼にはイギリス人の奥さんがいて、
こどもはベネズエラ人の養子をもうけたから
3人で会話するときはスペイン語なんだ、
君たちは何語で会話をするの?
hirokaという名前はめずらしい?

3人で世界地図をみながら
イタリア、スペイン、イビサにトウキョウ、ニューヨーク、
いろんな都市をみて、
お互いのことをいろいろと話した。

会話はすれすれだったかもしれないけれど、
心は笑顔と気持ちで通じ合っていた。

そしてその夜がルイジとの最後のお別れだった。
彼は夜当番なので、わたしたちが出発する
つぎの日の朝には会えなかったのだ。
切ない気持ちを抑えながら、
Grazie, Ciao Bella!
と両頬にちゅっちゅとひとつずつ。
紳士的イタリアンのやさしいキスだった。

アントニオとのお別れもとても辛いものだった。
滞在中はじめから最後まで
ことこまかにわたしたちの面倒をみてくれ、
彼がいなかったら大変なことになっていたかもしれない。

翌朝、アントニオからもさよならのキスをもらった。
ルイジのキスとは違って当たりが強く、
彼の頬の髭がじょり、じょりっとひと頬ずつ
わたしの顔に擦られるように痛かった。
別れてからもその痛みはしばらく消えず、
ハートの痛みと平行して想い出に残った。

だんなしゃんは最後、アントニオにこう言っていた。
「We come back, con bambino.」
つぎはこどもといっしょに戻ってくるよ、と。

また彼らに会える日が、いまからとても待ち遠しい。



p.s.
だらだら書いていたら、こんなに長くなってしまった。。
読んでくださり、ありがとう!(ペコリ)

たびたび、旅。 : comments(2)
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comment
とっても素敵な旅エッセー。日本にいる私の心にもイビサの爽やかな風がぬけていったような気がします。素敵な30歳の1年を過ごされたようで、何よりです。

con bambino!!にくいねーしんさん!すてき!
| waka | 2010/12/14 2:11 PM |
waka chama!
ながーーーーいのに、
いつも読んでくれてありがとう!!

素敵な30、2010だったわ。
わかちゃんも20代、はつらつとね!

うん、con bambinoにもぐっときた!
| pirocat | 2010/12/14 10:34 PM |
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